ユネスコの世界遺産に登録されたということは、その遺産が「顕著な普遍的価値」を持った人類共同の遺産として認められたということを意味します。特定の国家や国民の専有物ではなく、すべての人類が大切に守らなくてはならない遺産、次世代まできちんと引き継いでいくべき遺産として特別に指定されたということです。
第39回ユネスコ世界遺産委員会は、日本の産業遺産が世界遺産に登録された際、各サイトの「歴史全体」について理解できる「説明戦略」を立てるよう特別に勧告しました。その勧告の脚注には説明戦略と関連して日本の声明が注目されると記されています。日本の声明とは、日本政府の代表である佐藤地(さとうくに、当時はユネスコ日本大使)の発言のことです。日本大使は、朝鮮人とその他の国民(Koreans and others)が、本人の意思に反して動員され(brought against their will)、厳しい条件の下で(under harsh conditions)、労働を強いられた(forced to work)事実について理解できる措置を講じる所存である、と発言しました。この発言は国際社会に対する日本政府の約束と言えます。
第39回ユネスコ世界遺産委員会、ドイツのボン1(民族問題研究所提供)
第39回ユネスコ世界遺産委員会、ドイツのボン2(民族問題研究所提供)
会議場内の画面に映された勧告事項(民族問題研究所提供)
当時ユネスコ日本大使であった佐藤地の声明文
[声明の原文]
Japan is prepared to take measures that allow an understanding that there were a large number of Koreans and others who were brought against their will and forced to work under harsh conditions in the 1940s at some of the sites, and that, during World War II, the Government of Japan also implemented its policy of requisition.
Japan is prepared to incorporate appropriate measures into the interpretive strategy to remember the victims such as the establishment of information center.