三菱長崎造船所は強制動員と強制労働だけでなく、原爆被害という三重の痛苦の歴史を示す現場です。この真相調査報告書から三菱長崎造船所について知ることができます。
韓国原爆被害者協会の郭貴勲(カクキフン)会長は、韓国人原爆被害者の約2300人とその家族を含む韓国人の原爆被害についての真相調査を2005年3月31日に申請しました。日帝強占下強制動員被害真相糾明委員会は強制動員された韓国人の原爆被害に限定して調査を実施しました。
広島と長崎は日本の代表的な軍事都市です。戦時体制下、この2つの地域では朝鮮人が急速に増加しました。その人口増加は強制動員に関わるものです。その結果、強制動員された朝鮮人も原子爆弾による被害を受けることになりました。
原子爆弾の投下のため、関連資料はほとんど残っていませんが、長崎の場合、証言等をもとに、強制動員された朝鮮人労務者の数を約1万300人と推測しています。それは朝鮮から直接動員された人びとと日本の在住地から動員された人びとの数です。
広島とは違って爆心地との距離が近い長崎市の朝鮮人は被害の程度が深刻であると思われますが、実際には異なります。広島では市内の建物の疎開作業に投入されたかなりの数の人々が直接被爆して致命的な被害を受けました。しかし長崎市は山と渓谷に囲まれた地形のため、直接被爆よりも、原爆投下後に救出活動や復旧作業のために市内に送られた「入市被爆」が多いようです。
どれくらいの原爆被害があったのかを把握するにあたり、長崎に強制動員された朝鮮人の規模と実態を先に把握する必要があります。この調査報告書では、長崎市で長い間、朝鮮人強制動員の実態調査を記録し、研究書を発刊してきた「長崎在日朝鮮人の人権を守る会」の調査資料を主として活用しています。それ以外にも、生存者の方の証言を通じて、被害の実態を具体化しています。この報告書には最も大きな事業場であった三菱重工業長崎造船所の強制動員と原爆被害の実態が具体的に掲載されています。
広島・長崎における朝鮮人原爆被害についての真相調査 [NATIONAL ASSEMBLY LIBRARY]