御直ニ御尋之條々

一 (廿九) 十九年先の信使之時者、對馬茂若年ニ候か、十二年先之信使之時者、對馬茂心つき候時分ニ候か、不存候と申候ハ、如何樣之儀かと、被成御諚候。
拙者申上候者、朝鮮之書翰者、信使出仕之時持參仕候、御返簡ハ、御執權衆信使宿所ニ而直ニ被成御渡候うへハ、拙者不審たて可申儀ニ無御座候。

一 (右同) 取替之書竝印判今度豊前差出候。是者何樣子かと、被成御諚候。
御諚之樣子、今度書印判豊前差出し候。彼者私ニ仕候事者、其身手前に證據有之上者、拙者不存通可被思召分候。殊豊前竝七右衛門虛事を工者之儀ニ御座候間、證據與申候書印、今度公事ニ付、作り事ニ仕候哉、是以しれさる儀と拙者ハ奉存候。

一 (右同) 信使之時之進物差添候儀、不存由申候か、對馬も進物差上候時者可存候かと被成御諚候。
御諚之通、進上物差上候刻ハ、於殿中拙者も見申候。此進上物之儀、前方何色とも曾而不存義ニ御座候。於殿中七右衛門注文をひかえはえさせ申之由ニ候。信使　御目見進物同時ニ於御　前披露御座候。疑舗事ニ御座候者、信使被不審たて可申候得共、左樣之儀も無之候上者、拙者不審たて可申樣者無御座ニ由、申上候。

一 (右同) 御所丸朝鮮江差渡候儀、其使對馬內之者ニ候か不存と申候儀、何たる樣子として被成御諚候。
被成御諚候樣ニ、從江戶豊前內之者、古藤三郞左衛門と申者差越候而申候者、廿九年先之信使返禮之儀、親豊前遂披露、朝鮮江罷渡候。巳之年之信使返禮相延候間、可申渡旨遂披露候處、如先例仕候得之由、被成御諚候間、差渡可申候由申越候。拙者其節於京都、腫物養生仕居候內ニ申來候。請御諚候者、其通りニ仕候得之由申候。三郞左衛門在所江罷下、使萬事申付置候。何やう之儀も　御公儀江遂披露候と申儀、是ニよらす僞ニ而有之とは不存候。拙者さへ其通ニ存候得者、拙者內之者は遠國之者故、別而　御公儀無案內故、諸事御公儀之儀、加樣與豊前申候得者、不依何事驚候而、豊前下知ニ任候通、申上候。

一 (右同) 右御所丸書翰之儀者、不存候か、と被成御諚候。
書翰之儀、如何體ニ認渡候哉、於拙者聊以不奉存候。定而書翰者御座有間敷與存候。其子細者、親豊前朝鮮江罷渡候時、　權現樣江書翰之儀遂披露候處、それに不及罷渡候得之由、被仰付、朝鮮江罷渡候由、豊前舊冬申上候。左候ハゝ、御所丸ニ書翰有間敷と奉存候。對馬之儀、遠國と申古風故、家老役申付候得ハ、万事任置候體ニ御座候。其上豊前儀、諸事我儘に仕へきと存候。したてに其身內に家老と申候て、四五人仕立置、豊前御當地ニ罷有候時者、右之四五人ニ万事其身役之儀をさわかせ申、拙者內郞徒共一人も、差出不申樣ニ仕來り候。其上豊前儀、拙者家老と乍申、御公儀江被成御存知、先御代ニ者、自然御言とも被下候間、たとひ我等をないかしろに存候とも、對　御公儀御うしろくらき事可仕とハ、ゆめゆめ不奉存候處ニ、僞のみ仕置候儀、今度其身申出し、始而承驚入候。

一 (右同) 古對馬守書翰取替之儀存候由、豊前申候、此儀者如何與被成御諚候。
朝鮮一亂以後、不通ニ候處、從　御公儀和睦之儀、拙者親ニ被仰付候時、柳川下野父子江申付候處申調候。其段　御公儀江茂聞召上候故、朝鮮万事差引、彼者江任置候。其つゝきを以、當豊前江も不相替、万端申付置候。且ハ左樣之儀ニ付、拙者郞徒なから、　御公儀江能被爲成御存知候。殊豊前祖父下野ゟ當豊前ニ至て、朝鮮之官位仕居候故、日本 朝鮮之間をもつくろい、非法之儀仕候與存候、拙者親者、左樣之大切之儀ハ仕間舗候。親豊前仕候儀ハ無疑候。七右衛門親豊前茂仕候與申上候者、其まきれ無御座候。拙者親之事不罷居候間、今更彼者共申渡儘に、申上ルにて御座候由、申上候。

一 (右同) 數々之內之者、非道之儀仕候を、對馬守一として不存候者、何としたる儀かと被成御諚候。
御諚御尤ニ奉存候。倂豊前儀拙者郞徒と乍申、國々之諸太名家老に相達候。其子細ハ御執權衆被存候。何茂御執權衆江拙者參候刻、豊前召連罷出候に、其座之作法茂、主從之わかち達而無御座候。其うへ內外共之儀、拙者申付置、殊拙者いもとむこにも仕候得者、國許ニ而も、豊前儀惡事候ても吟味仕者無御座候。前々少々吟味仕候者を以、　御公儀之威をかり、其者之身上つぶし、又は殺害仕候者多く有之故、其後者不依是非、豊前我儘之所存ニ御座候故、何やうの儀もたとへ國中ニ存たる者候とも、拙者江申聞候はずにて無御座候。其上拙者誤仕置候。豊前非道之儀御座候とも、可達上聞與、度々御執權衆迄申入儀ニ而無御座候。此段被聞召分可被下候由、申上候。
右之通被聞召上候而、被成御諚候者、豊前申分無之者罷たてと被成御諚、豊前竝七右衛門罷立候。其次に方長老被罷立候。其後　御前ニ向、御禮申上致退出候。