○ 寬永十一甲戌年、拙者妹豊前方離別仕候樣子、於京都七月晦日、御老中方へ以書付申上候覺、但 公方樣御上洛ニ付、私も御供仕、致上京罷有候時也。

書立

一 (十五) 豊前離別仕候儀、五月廿日之由申候。其時分我等江戶江罷有候內にて候得共、此方江豊前不申聞、拙子留守ニ罷成候而、屋舗江申遣候事。
一 (右同) 豊前申候者、彼一件還御後可被相濟之由、御年寄衆被仰付候。扨者御跡をしたかひ可罷上候哉と、重而御尋申候處、罷上候得之由、御年寄衆依御差圖、罷上候間、依其離別仕候由、拙子留守居之者ニ申聞候事。
一 (右同) 豊前離別え刻、拙子妹申候ハ、御手形を申請候而、早々在所江送屆候得之由、申候へハ、豊前申候ハ、今ハ御上洛砌にて、無御障候間、從上方申請候而、差越可申之由申候。拙子妹重而申候ハ、必定其通ニ而候哉與申候得者、豊前申候ハ、手形之儀は大炊頭殿御請合ニ而候間、其上ハ相違有間舗之條、追付御手形差越可申之由申候事。
一 (右同) 豊前拙子留守居之者ニ申候者、離別申候間、屋舗江可相渡之由申候處、拙子妹申候ハ、此三四ヶ年豊前申事、依有之對馬守と不通ニ罷成にて、對面不申候之由、申候處、豊前拙子留守居之者ニ、色々理申候條、離別之上は不及力候。此段拙子所江可申遣も程遠候。豊前も近日罷上候故、拙子留守居之者、酒井雅樂頭殿江罷出、豊前申分得御意候而、請取申候由申來候事。已上。
　　右ヶ條迄ニ而候、無目付ニ而已上書斗ニ而遣候。
　　酒井讚岐守殿江ハ、七月晦日之晩遣候使、古川右馬助書狀相添申候。