明治九年四月卄六日

　黑田參議　外務大丞　宮本小一
　各通　閣下
　井上議官　外務權大丞　森山茂
一 翰拜啓仕候然は朝鮮修信使迎接の義政府にても深く御配意にて彼よりは火輪船賃幷賄方とも自費營辨の筈に申來候得共此方にては一切官費を以支給し遣はされ候積り有之尤彼方にて强て相拒み候はゝ猶其時誼に任せ候積り有之候
一 郵船黃龍丸を被差出候事に相決候此船には上等室六ヶ所其外百五十房有之由に付萬端向は間に合可申存候
一 外務少錄水野誠一幷荒川書記生尾間書記生其外等外出仕三名小遣等此地より發遣し釜山より中野書記生幷韓語生徒十一名附添出京せしめ候に付先つ大抵差支無之見込に御坐候
一 東京旅宿は小川町 錦小路一番地三井所持の舊幕高家の屋敷有之間敷も多く八十人のもの夫々階級を以て席順を定候に都合よろしく相見候間右を相定其段彼方えも前以申入候筈に有之候且疊表替又は氈絨等敷込候序も取設候筈に候
一 迎船は對州へは不立寄馬關兵庫は數時間碇泊韓人を上陸散步せしめ養生爲致候筈に有之候
一 兵庫縣令等へ面謁せしめ候事は禮式等彼未だ我情實不案內の間は彼是と六ヶ敷かるへくと存し候條先つ面會せしめす我よりも尋問せしめす一と先東京へ行連れ來り情實分解の上神奈川縣令を初歸途には必彼より先尋問せしめ候見込に有之是等は猶其場合により接伴の者程能周旋爲致候筈に有之候
一 船中乘組中は韓人えも必得方ヶ條を以相示し我官員幷船司水夫等へは禁酒又は其他嚴重の告戒を申付置候
一 右等の外細密の事は玆に條陳不仕候抑此度信使來朝の擧は閣下の餘光より出候義に付諸事御指揮をも可伺筈にて取調中右黃龍船は當時長崎に在り不日大阪え相回り候筈との事にて迎接官俄に卄八日玄海丸便より東京出發の事に決定昨今意外の混雜極め候に付不得止事槪略書中を以陳述仕候尤明卄七日朝荒川書記生尊邸へ可差出條猶高喩の趣及彼え相當の御用も候はゝ御直に被仰含度候依て此段申上候也

　明治九年四月卄六日