朱書
　所務相成, 御役儀之用費不足仕, 數十年他借を以相償候借金高.
　　借金筋之儀, 京・江戶・大坂共, 奉行所江十五口出訴, 切金等ニ罷成候も有之, 當時內濟ニ被仰付, 五口程殘り有之由. 勝手向差支候ニ付而者, 他借之手段相働候ものハ輕き者・大小姓・馬廻りニ被取立候類有之候. 此節京・江戶・大坂, 其外長崎町人等, 手代を對州江差越置及催促, 自身罷越居候ものも有之候由. 京都 上田理兵衛・大坂 酢屋孫四郞与申者ハ, 自分金ニ而無之, 此節金主より千貳百貫目餘之出入, 可及公訴樣子之由ニ御座候.
　　惣軆通入方, 朝鮮より人參等着次第入札致させ, 借銀代り高札之者江品ニ而相渡候仕方ニ御座候. 長崎ニ而買受候胡椒・蘇木代, 同所町人讚岐屋源藏・入來屋利右衛門引請相納, 其外調達之銀子四百貫目程有之由ニ而, 當時右兩人方より今魚町 田中伊三郞・新橋町 萬平次・東濱町 儀助与申者を差渡し, 右品々船に積持參附居申候. 其筋々銀高之儀, 一々ニ者不相知候得共, 是迄手段を以, 借入候借金夥敷儀ニ相聞, 右之內ニ者國主之用立ニ相成候外, 借入之諸雜費遣捨ニ, 諸國在留之內, 役人之奢侈ニ費, 國主之爲ニ成候者少き儀与相聞申候.