千八百八十年九月十一日附貴簡致落手候陳者過日御所望に應し貴國海軍コモドール、シユフエルト氏より朝鮮國王陛下宛の書簡に拙者添簡いたし同國政府へ傳達候處右コモドールの書簡同國禮曹判書より同國王陛下へ奏上せす封緘の儘之れを返却相成候は貴國及ひ我政府へ對し不敬の所爲に有之候旨御縷述且つ右コモドールの書簡封緘の儘今一應我公使より同國政府へ差出方等御請求の趣致了承候最初右コモドール、シユフエルト氏の書翰同國政府まで送達方御賴談の際該書簡同國政府に於て受領の有無に不拘兎に角拙者より添書いたし同國政府へ屆呉候樣御申聞の次第も有之候に付則ち該書簡屆方取計候義にて右コモドールの書簡を受領すると否とは同國政府の撰ふ處なれは素より之れを强る譯にも至り兼候義は兼て閣下にも御同意の義と存候将又該書簡返却等の義は同國方今の時勢に就て推量候得は彼に於て貴國に對し强ち不敬の擧動に及ひ候事には無之却て至當の處分を施したる樣自認候義と被考候然るに御來示の如く今一應該書簡を同國政府へ傳達いたし候とも前同樣之れを斥そけて受領せさる時は其結果たるや特に貴政府の不快を増すに過さるのみならす夫か爲め将來我國との交誼上多少障碍に可相成義を醸成候哉も難計其邊深く苦慮いたし候前陳の次第に付右コモドールの書簡再ひ同國政府へ傳達し其に候はゝ在釜山我國領事を以て東萊府使へ傳送する迄の事にして之か返簡を得るの責任無之候はゞ今一應該書簡送達方可爲取計と存候此段囘答得貴意候敬白

井上外務卿
米公使宛