外務大丞　宮本小一
　訓條
一 日本人ノ遊步規程十里ハ彼モシ多少短縮センヲ求ムル時ハ五里迄ハ許諾スヘシ
一 朝鮮人民日本ニ渡來スルノ件附錄案ノ如ク記載スルヲ欲セサル時ハ暫ク此條ヲ削去ルヘシ
一 彼ヨリ耶蘇敎ヲ彼國人ニ傳播スルヲ禁シ及ヒ他ノ外國人日本人ノ籍ヲ借リ朝鮮各港ヘ居留商賣スルヲ禁スル等ノ條款ヲ加入セン事ヲ請フトモ之ヲ許諾スヘカラス然トモ若シ之カ爲談判整ワサルノ場合ニ到ルトキハ理事官ノ名ヲ以テ別ニ書柬ヲ作リ其請求ニ應スルモ妨ナシ
一 朝鮮官員貿易ノ爲朝鮮人民ヨリ賄賂ヲ求メ又ハ專賣ヲ許シ或ハ重稅ヲ課スル等ノ事アリト聞猶釜山ニ到リ實際ヲ審問シ果シテ然ラハ此弊害ヲ救ヒ貿易ノ妨トナラサル爲ノ要領ヲ約束シ置クヘシ
一 兩國男女姦通律ヲ設ケン事ヲ彼ヨリ强請スルモ我邦旣ニ一定ノ律アリ今是ヲ變通スヘカラス然レトモ彼國一方ニテ其國民ヲ禁止セント欲スル爲國律ヲ立ルハ其意ニ任スヘシ
一 彼我漂流人民ヲ救援スル爲ノ經費ハ兩國相互ヒ支給シテ其償還ヲ求メサルハ普通ノ常理ナレトモ朝鮮人民ノ我レニ漂流スル每歲比々トシテ絶ルナシ我カ人民彼ニ漂往スルハ僅々ナリ且彼邊民粮食足ラサル時ハ故漂シテ救活ヲ求ムルノ意ナキニアラスト然レハ是等ノ煩雜ヲ免カルヽ爲漂民ヲ救活スル時ハ相互ニ相當ノ補償ヲ約スルモ亦當然ノ理ナリ條約議定後別ニ此事ヲ約シ置ヘシ
一 淸國北京ト朝鮮京城トハ陸地來往シ得ヘキ地ナレハ兩國ヘ派出ノ我官員時トシテ兩都ノ間ヲ旅行シ得ヘキ爲朝鮮政府ヘ照會シ彼强テ是レヲ拒マサレハ約諾ヲ求メ置ヘシ
一 貿易ノ催進ヲ要スル爲彼我共ニ輸出入稅ヲ徵スルナシ是通商章程中ノ要旨ナリ然レトモ朝鮮政府强テ收稅法ヲ今ヨリ起サント欲シ是ヲ肯諾セサレハ談判一決ノ場合ニ至ル能ワサル時ハ朝鮮國ヘ輸入品稅ヲ從價五分ヲ以肯諾シ是レニ從ツテ收稅法ノ一款ヲ通商章程中ニ加ヘテ事ヲ議スヘシ
一 貿易規則中左ノ一款ヲ加フヘシ進口出口ノ手數ヲ謝スル爲左ニ揭クル港金ヲ日本船主ヨリ朝鮮國官廳ヘ納ムヘシ
　　 一 連桅檣ノ商船及蒸氣商船　　金五圓
　　　木船附屬ノ小艇ヲ除ク
　　 一 獨木檣船　　　　金貳圓
　　　貨物五百石以上ヲ載セ得ヘキ船
　　 一 同　　　　金壹圓五拾錢
　　　貨物五百石ヲ載セ得サル船
　　　 日本政府ニ屬スル諸官船ハ港金ヲ出ス事ナシ
　 左ノ件々ハ彼强テ請求スルモ肯諾スヘカラス
一 日本金銀貨於朝鮮同國人民使用スルヲ拒ム事
　　　 但金銀貨ノ名ヲ以使用スルヲ拒ムトモ金銀塊モ貨幣ニ作リタル金銀モ日本物品タレハ輸入シテ物貨ト見テ韓人ト貿易スルヲ得ル理アレハ本文ヲ必ス條約面ニ揭載セサルへカラサル件トナスニアラス然レトモ成ルヘキ丈ケ揭載スルヲ求ムヘシ
一 日本人民在韓中彼國人民ヲ使役ニ供スルヲ拒ム事
一 輸入ヲ禁セサル間ハ朝鮮人民我邦物ヲ隨意使用スル事
一 彼國ヨリ米麥ヲ輸出スルヲ禁止セント乞フ時ハ是ヲ許シ對州人民年來朝鮮米ヲ食用トスル便利ヲ失ワサラシメン爲彼承諾スルナラハ公貿易ニ似タル變通ノ方法ヲ試ムヘシ
以上數款ノ外我レハ以テ鎖末ノ事件ト爲スモ彼レニ在テハ關係少ナカラスト思量シ强テ約定ヲ要スル條款アラハ我國權及ヒ從來ノ外國交際上ニ害ナキ者ハ時宜ニ依リ彼ノ請求ニ應スルモ妨ナシ

　明治九年六月卄八日
　　　　　　太政大臣　三條實美