去月卄二日本館在勤山之城書記生歸京申付最早到着候事と存候其節上陳候通り訓噵には請罪待勘の身高辭柄を藉り我との通路を備んとする勢を示し來るの際同卄四日不圖御軍艦雲揚號渡來候所翌々卄六日訓噵就館恭順以て軍艦の來意を尋問候に付我よりも別紙知第六號附錄の通り相答猶同卄九日訓噵別差とも就館後第六號附錄の通り應接いたし候義に御座候
一 初め訓噵請罪待勘を口實として就館の道を阻んとせしに雲揚艦渡來に付頗る驚動嚮者の勢ひに反し遽に就館但し恬然無耻は彼の常態因不足怪因て我は唯使事澁滯我朝の責問する所となり惶悚に不堪を陳し徐々其回答の日を詰り他の一切緩急動靜をして測り得さらしむるを旨とせり彼は今般都表え別て綿密啓聞候間聢と日期を訂し難しといへとも我本月卄日乃至卄五日頃迄には必らす回敎を得へき旨申出且浦瀨書記生へ別段懇情申殘し候其決答果して如何は今豫しめ議し難く候得共雲揚艦の渡來は彼か待勘の黠策を擊破し尙將來の聲援となるへくと被察候
一 先書申陳候通り彼國より淸國へ對し何等の協議往復あるや明らかに知る能はすと雖も今後光緖の年號を書載せ度云々又は大日本の大字は事大の典文に碍り云々等暗に淸國關係に說及さん爲の地位を占め候樣推察罷在候處果して過日駐淸鄭書記官信書中朝鮮國外患を慮り淸國の保護を乞ふとの議ありて旣に軍機處の大會議に題書せるよし相見へ其是照合すれは其間の疏密はしらす幾分の關係ありと見さるへからす若し此依賴の事實ならは彼れ前年より其自作の孽を殘せし轍に恐念し到底其力の孤立すへからさるを悟り漸く開國に進むの非ならんと被存候就ては駐淸公使館にも一層注意其探偵する所速に報相[知]いたしくれ候樣と御達し相成度祈上候
一 彼國京畿道 忠淸道の邊にて高麗王苗裔の人謀反其勢稍熾なりとの風說有之且蔚山府に於て土民蜂起の赴卽別紙に錄上候是は確說と存候
一 右等の次第に候得は山ノ城使より伺上候件々御指令拜接の日を屈指企望の至に不堪候也

　八年六月十四日
　　外務六等出仕　廣津弘信 (印)
　　外務少丞　森山茂 (印)
　全權公使 柳原前光殿