5.「東北工程」の事業内容と研究の結果物
⊙ 中国社会科学院傘下の中国辺彊史地研究中心ホームページの「東北工程紹介(東北工程簡介)」を見ると、東北工程の課題は「研究類」、「翻訳類」、「公文書資料類」に分類されている。
⊙ このうち研究類は、基礎研究と応用研究に細分される。基礎研究とは歴史上の学問的理論の研究を意味し、応用研究とは、基礎研究の結果を基に高句麗・渤海など特定の歴史と彊域の帰属問題、それによって提起されうる国境・領土紛争、外交関係、文化観光戦略など現実的に派生する諸問題が含まれる。
⊙ 翻訳類は、韓国・北朝鮮・ロシア・日本・西洋の研究成果の翻訳、ロシアの学者による極東地域の歴史・地理研究論著の要約、韓国と北朝鮮の学者による古朝鮮・高句麗・渤海の歴史・考古地理研究論著の要約、韓国と北朝鮮の学者による韓中関係史における論点の翻訳と評論を含む。
⊙ 公文書資料類は、東北辺彊に関連する公文書史料の整理、東北辺彊、韓・中、中・ロシア、中・モンゴルに関連する公文書目録の整理、東北辺彊の歴史地図の収集整理およびその研究、東北辺彊に関連する写真の収集整理およびその研究が含まれる。
⊙ 東北工程の課題を遂行するためのガイドラインを調べてみると、古代中国の彊域についての理論研究、東北地方史の研究、東北民族史の研究、古朝鮮・高句麗・渤海史の研究、韓中関係史の研究、中国東北辺彊とロシア極東地域の政治・経済関係史の研究、東北辺疆の社会安定に対する戦略的研究、朝鮮半島情勢の変化が中国東北辺疆の安定に及ぼす影響についての研究など、韓国の古代史から現在と未来に関連するあらゆる問題が網羅されていることがわかる。
⊙ このようなガイドラインに従って、2002年に27の課題、2003年に15の課題、2004年に6つの課題に対する基礎研究と、具体的な内容が伝えられていない応用研究をはじめとする翻訳類の14の課題、公文書整理類の4つの課題が全国的な公募によって選定された。東北工程のホームページである「中国辺疆在線」に公開されているさまざまな選定課題は、高句麗史のみならず渤海史、古朝鮮史をはじめとし、間島および韓中国境問題など我々の歴史と直接的・間接的に関わる問題が主軸をなしている
⊙ 東北工程課題の研究結果は、現在まで合計25種類が発刊されている。例えば、中国社会科学院の直営出版社である中国社会科学出版社から「東北辺彊研究叢書」シリーズとして『古代中国高句麗史続論』をはじめとする9巻が出版された。また、吉林人民出版社からは『簡明高句麗史』をはじめとする6種8冊が発刊された。その他、香港亜州出版社からは『唐代渤海国五京研究』、黒竜江人民出版社からは『二十世紀中国東北辺彊文化研究』が発刊された。このような例から、各地域の出版社からも続々と個人学者らの研究結果物が発刊されるものと予想される。