Title | 玄室西壁 | ||
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徳興里壁画古墳の玄室に描かれた壁画のうち、西壁の壁画である。玄室を飾る壁画素材としては、墓主夫妻に係わる私的な生活の場面、すなわち墓主夫妻の室内生活図、西園(西側の庭)で開かれている馬射戯の光景、墓主夫妻が信仰心の篤い仏教信者であることを示す七宝行事図と蓮池、そして墓主の豊かな経済能力を暗示する倉庫と馬屋、牛小屋などが描かれた。このうち壁画の中心になる部分は、北壁の華やかな帳幕の下に座っている墓主夫妻である。天井部分には豪華な建築構造を示す二重梁や火焔文などが施されている。前室の天井が日月星辰(太陽、月、星座)や仙人、瑞獣(縁起のいい動物)、雲文様や火焔文様などにより、華やかで神秘的な天上の様子を表しているのとは対照的である。
玄室の西壁も、向かい側の東壁のように画面が上下左右に4等分されている。東壁左側上段には馬射戯の光景が描かれており、下段には葉の生い茂った1本の木を中心に馬と馬丁が登場する。東壁の右側には倉庫が描かれている。2棟の倉庫が並んで描かれているが、右側の倉庫にはある人物が梯子を登っている様子が描かれている。
天井は他の壁面と同じく、建築部材と火焔文(炎の文様)で飾られている。天井の屋根構造は上下2重に梁を置き、その間に人字形の割束(大梁の上の2重梁または桁を支える短い柱)と蟇股を重ね合わせて積み上げた華やかな姿である。このように2重の梁で築造された雄大な建築物の下に墓主夫妻が生活する様子が描かれたのは、墓主の生前の栄華を極めた暮らしが死後の世界でも続いていることを反映していると解釈することができる。