2.独島の地形と生態
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- 学習目標
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独島の生成年代と地形的な特性がわかる。
独島の気候や生態系について理解できる。
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- 思考を開く
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独島は海底から吹き出た溶岩が固まり、形成された火山島である。火山島は一般の島とは地質的に異なる構成が見られる。このような独島の地形は、気候と生態系にどのような影響を与えるのだろうか?独島でしか見られない独特な生物や微生物にはどのようなものがあるのだろうか?
独島の形成
もともと朝鮮半島と日本列島は、ユーラシアプレートの東端を構成していたが、2,300万年前にユーラシアプレートと太平洋プレートが衝突し、その衝撃で朝鮮半島が隆起した。そして、朝鮮半島と日本列島の間が陥没して周辺の海水が流れ込み、東海が形成された。
その後、海底2,000mから噴出した溶岩が固まり、鬱陵島と独島が形成された。独島は約460万年前に海底から噴出した溶岩が固まって基礎が固められた後、270万年前に海の上に姿を現した。独島は元々一つの島だったが、波浪による侵食作用によって約250万年前に二つの島に分離された。長い歳月の間、度重なる雨風や波浪による浸食作用により、210万年前に現在のような姿になった。
独島は、250万年前に形成された鬱陵島、120万年前に形成された済州島よりも約200万年も前に形成された。
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- 活動 1
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独島、鬱陵島、済州島のうち、どの島が最も古い島なのか、生成年代を比べてみよう。
独島の地形的特性
独島は海の影響を多く受け、海水面付近に様々な海洋地形を形成しており、火山島であるため火山岩が基盤岩となっている。また、独島は、堆積した火山灰が硬く固まった凝灰岩と、アルカリ性の火山岩である玄武岩、粗面岩などで構成されている。これらの岩石は硬そうに見えるが、実際は岩質が脆く、割れたり磨耗したりしやすい。
東島の頂上部は他の場所に比べると比較的平坦で、ここには有人灯台や独島警備隊の建物がある。土壌層は20~30cmほどで、植物が育つ。東島の海岸付近は、ほとんどが高さ30m前後で傾斜が急な となっているため、植物が育ちにくい。一方、西島の頂上部は鋭い岩石が稜線を成しているため植物は育ちにくいが、頂上部の南西側は多少平坦なため、土壌層が形成され植物が育つ。そして、西島の北側にはムルゴルと呼ばれる泉があり、地下水が湧き出すため飲料水を得ることができる。
独島で確認できる主な地形は、 のような火山地形、断層線や岩脈のような構造地形、そして などの海岸地形がある。また、風化作用の影響を多く受け、 が広範囲に分布し、海食崖も複数の地点で見られる。現在も、独島の地形は波による浸食作用で少しずつ変化している。
独島周辺の海底地形
鬱陵島と独島は海水面下で の形で互いにつながっている。独島の海底地形は、海水面下に高さ約2,000m、下部直径が20~25kmの峰の形でそびえている。そして、海中に隠れている下部は大昔に始まった火山活動により作られたもので、鬱陵島と独島の間には水深2,000mを越える平原があり、その間には安龍福海山がある。
独島から鬱陵島までは、一群の海山島が列島を成しているのだが、韓国はこれらの海山に独島と関係の深い人物の名前にちなんで地名をつけた。独島から南東に約15kmほど離れた位置にある海山を沈興澤海山(第二独島海山)、55kmほど離れた位置にある海山を異斯夫海山(第三独島海山)と呼んでいる。
このように、鬱陵島と独島は海山でつながっており、粗面岩で構成されていて地質的にも二つの島は似通っている。その反面、日本の隠岐の島は火山活動とはほとんど関係のない片麻岩で構成されており、地形的にも互いに異なっている。
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独島周辺の海底地形を見ると、鬱陵島と独島の間に安龍福海山がある。独島との距離関係を把握し、異斯夫海山と沈興澤海山を探してみよう。
独島の気候
中緯度に位置する韓国は、年間平均気温が8~14℃で温帯と冷帯気候の特性を示している。おおむね北方と内陸に向かうほど気温が低くなり、夏と冬の気温差が激しい。冬は大陸の影響で寒冷乾燥な気候で、夏は海洋からの影響を受けて高温多湿な気候となるのが特徴である。ところが、鬱陵島と独島は東海上に位置しているため、海流の影響を受けて海洋性気候の性格を示している。独島の気候に影響を及ぼす海流は、東韓暖流、北鮮寒流である。夏は東韓暖流の影響を受け、冬は北鮮寒流と東韓暖流が鬱陵島付近で交差する。したがって、最も寒い1月でも平均気温が氷点下に下がらず、最も暑い8月でも平均気温が24℃を超えない。
年間平均気温は鬱陵島と独島が12℃で、同じような緯度の内陸地域と比べると暖かい方である。月平均気温も鬱陵島と独島は似ていて、1月と2月は低く、8月が最も高くなっている。
統計的に見た時、鬱陵島と独島の場合、夏期3ヶ月間の降水量が多いが、7月の降水量が多いのは梅雨の影響であり、8月と9月に降水量が多いのは台風が頻繁に通過する経路に位置しているためである。
独島の風は、季節によって北東の風と南西の風が主風で、平均風速は強い方である。風の強い1~4月と5~8月は風速が強く変動が激しい方で、10月は風速が弱く変動が激しくない。
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次のグラフから、鬱陵島と独島の月平均気温と月降水量の特徴を調べてみよう。
独島の生態系の特徴
独島は1年のうち85%が曇っているか雨が降るため、比較的湿度が高い。また、独島は強い海風により塩分が多く、植物が育つには厳しい環境となっている。独島で生育する植物を見ると、劣悪な環境にも耐えられる植物だけが生き残ることができ、陸地より種類が少なく、木の高さが低い方である。独島で育つ植物は、木を含めて約50~60種あるが、オオダルマギク、オオイタドリ、タケシマキリンソウ、ハマウツボ、ギシギシ、オニヤブソテツ、ハマボッス、ツルナなどが代表的である。
独島周辺の魚類とその他の生物
独島周辺の海域で見られる魚類は、メダイ、ウマズラハギ、マス、タラ、スケソウダラ、サンマ、フグ、イカ、タコ、サメ、コノシロ、カレイ、イシダイ、クロダイ、メジナ、ムラソイ、クロソイ、クマノミ、キュウセン、クジメ、コンブ、ワカメ、サザエ、ナマコ、アワビなどがある。
独島の昆虫類は大きさが小さく、飛行性が弱いことが特徴で、約93種の昆虫がいることが確認されている。
また、独島は移動中の鳥類の避難所として渡り鳥も多く集まる。独島で観察された鳥類は約139種で、ウミネコ、ヒメクロウミツバメ、オオミズナギドリ、タイリクハクセキレイ、ニュウナイスズメなどが代表的である。特にウミネコとオオミズナギドリ、ヒメクロウミツバメは「独島天然保護区域」において法的に保護されている鳥でもある。
独島には無脊椎動物が約370種、海藻類が約223種いる。そして、独島にだけ存在する微生物として、2005年に発見された「トンへアナ・ドクトネンシス(
Donghaeana Dokdonensis)」がある。これは略して「東海独島」というが、2006年に世界的な学術誌に紹介された。