右之趣尊公之御批判を受申度奉㆑存心入にて, 如㆑斯數通之書物を懸㆓御目㆒候. 尊公之御一言を神明之如く奉㆑存罷在候間, 必御隔心なく大槪之御批判承度奉㆑存候. 右數通之書物之內, 枝葉之處は不㆑宜儀如何程も可㆑有㆓御座㆒候得共, 其段不㆑被㆓仰聞㆒候ても不㆑苦, 只右申上候大綱之處之是非は, 御心入之大意を承度奉㆑存候. 竹島之儀日本之地を去る事百六拾四里, 朝鮮之地よりは樹木磯際迄相見へ, 誠に朝鮮に屬候段, 地圖・書籍之考, 言語辨論之勞無く相知申たる事に御座候. 三度之漂民を被㆓送還㆒候時之付屆無㆑之候と申所を言立, 初度之返翰に貴界竹島と書き付被㆑申たる所を言立にして, 彼島を永く日本之屬島と極め候樣仕度と被㆑申候段, 假令其事成り候ても, 日本之公儀に他邦之島を無理に取りて被㆓差上㆒たるにて候故不義とは申候而も, 忠功とは被㆑申間敷候. 朝鮮よりは御先祖樣以來恩遇を御受被㆑成たる事に御座候處, 無理に彼方之島を御取被㆑成, 日本に御附被㆑成候段誠に不仁不義なる事にて可㆑有㆓御座㆒と存候.
日本之公儀は彼島之來歷少しも御知り不㆑被㆑成候故, 去々年御國へ之被㆓仰付㆒に, 重て朝鮮人彼島に不㆓罷越㆒樣に被㆓申付㆒候得之旨, 急度申渡候へとの御事に御座候. 其節御國より彼島之儀を公儀へ可㆑被㆓仰上㆒事と, 心有る人は皆々申候得共, 執事之心に同意無㆑之, 公命之趣を以て直に朝鮮へ被㆓仰掛㆒候. 朝鮮よりの御返簡到來之節公儀へ被㆓仰出㆒, 御同意を御受被㆑成思召入を被㆓仰上㆒候て, 其上にて如何樣共可㆑被㆑成儀と心有人皆々申候得共, 執事之心に同意無㆑之, また直に彼御返翰を被㆓差返㆒, 朝鮮の勢變じ候て, 只今の返翰は大に日本を咎めたる紙面にて御座候. 只日本を咎めたる所を除けさせ, 日本より重て朝鮮人彼島に越さゞる樣被㆓仰付㆒候得との返答, 無禮成儀さへ無㆓御座㆒候はゞ, 彼方之島と申來歷を如何程書候ても不㆑苦儀と存候. 公儀へ其趣を御屆被㆑成候はゞ, 必彼島御返し被㆑成にて可㆑有㆓御座㆒奉㆑察候. 六郞右衛門殿申分には, 彼島朝鮮之地に極り, 日本より御返被㆑成候樣に成行候ては, 口惜き事に候と某と對談之節も度々被㆑申候. 誠に難㆓心得㆒儀と存候.