一. 今度某朝鮮へ罷渡, 彼方と往復之書付眞文・和文共に十三通致㆓進覽㆒掛㆓御目㆒候. 此十三通は某方に別に控無㆑之候間, 二・三日御覽被㆑成候はゞ, 慥成る飛脚便にて此方へ御送登せ可㆑被㆑下候. 此程采女殿へ申入候は, 西山寺・加納幸之助殿・瀧六郞右衛門殿・平田茂左衛門殿文才も有㆑之, 朝鮮之事をも被㆑存たる儀に御座候間, 右四人之存寄書付させ御覽被㆑成, 御用に立ち可㆑申儀に御座候はゞ, 被㆓仰聞㆒被㆑下候へかしと御賴被㆑成候得, 此一件心易く相濟候存寄有㆑之候由六郞右衛門殿・茂左衛門殿と被㆑申候由, 方々にて承事に御座候. 六郞右衛門殿は竹島今度日本之島に極申候樣成行被㆑遊方可㆑有㆑之事に候. 公事者日本十分之御勝公事と申儀を度々某にも被㆑申, 近來も彌左樣被㆑申候と之儀方々にて承り申事に御座候得共, 某見識にては尊公御使者に御渡被㆑成候而も, 竹島を日本之島に極たる返翰御座被㆑成候儀は, 決て不㆓相成㆒儀にて, 假令成申勢にても, 此方より左樣之不理成儀被㆓仰掛㆒間敷儀にて御座候. 彼國之理も立, 日本之理も立候御返簡を御心を被㆑盡御取歸被㆑成候ても, 不㆑冝返翰など.
申候沙汰御座候ては, 某には少も構不㆑申候得共, 尊公之御苦勞之功少き樣成行申候段如何と奉㆑存候. 殊に國中之智を御盡させ被㆑成候段, 御用之御爲にて御座候間, 右四人之儀御賴被㆑成候へ, 竹島を丸取に仕る見識被㆓申出㆒候はゞ, 其議論之相手には某可㆓罷成㆒候と申, 采女殿御得心被㆑成右之通被㆓仰上㆒, 五・六日以來四人之內幸之助殿は不㆓罷出㆒, 外之三人被㆓罷出㆒, 某今度朝鮮にて調候書付之趣甚不㆑宜由を被㆑申, ケ樣に仕成し候上は, 存寄御座候て申上候ても無益之ことゝ被㆑申候由, 御近習衆御語にて承り候. 某申候は, 其不㆑宜次第一々書付させ御覽被㆑成候て, 某へ返答書を被㆓仰付㆒被㆑下候得, 何時にても其開きは某可㆓申上㆒と申置候.
然共いまだ書付も不㆑仕, 只三人毎日被㆓罷出㆒, 某書付置候次第之不㆑宜所を被㆑申迄と相見申候. 然共其趣上には御信用被㆑成たる樣子共相見へ不㆑申候. 某仕置候事之內にて不同意に被㆑存候第一之ことは, 御返翰之注文を彼方に爲㆑知たる事にて候と承り候. 六郞右衛門殿見識は竹島丸取に仕る見識にて御座候故, 彼注文甚心に叶不㆑申筈にて御座候. 彼注文に付某所存段々有㆑之事に御座候. 注文を彼方に遣し候儀, 後日公儀に被㆑遊㆓御聞㆒御咎を被㆑蒙候時, 天下之御執政・諸執政を相手に仕候而も可㆓申開㆒と存居申候故, 六郞右衛殿右之通被㆑申候ても, 左樣之理も可㆑有㆑之哉とも存不㆑申, 某心には天下執政之批判より尊公之御一言を重んじ恐れ申事に御座候間, 右之注文仕たる儀不㆑宜と思召候所は, 其元より飛脚御立被㆑成候便に御示敎可㆑被㆑下候. 六郞右衛門殿心に叶不㆑申と被㆑申候所は, 皆某心に大節と存候所にて御座候.
竹島と蔚陵島二島に仕るこそ能く候に, 一島に仕たる注文惡敷と被㆑申, 只今之返翰を不㆓取歸㆒, 館守に預け置申段惡敷と被㆑申, 彼島を古の朝鮮に屬したると此方より許し候所も惡敷と被㆑申候由承り候. 是皆此一件之大節にて御座候處, ケ樣に被㆑申候段, 誠に某見識とは黑白之違にて御座候. 尊公之御心にも右之段々某申所惡しくと被㆓思召㆒候はば, 必可㆑被㆓仰下㆒候. 今度之東行は公儀に御伺之節, 某を豊後守樣御用人へ御逢はせ被㆑成候儀も可㆑有㆓御座㆒候間, 只今までの存寄甚惡敷事にて御座候はゞ, 豊後守樣之御用人へ對し申述候事にも, 定て惡敷事可㆑有㆓御座㆒候間, 愼み控可㆑申候.