朝鮮尋交手續幷目的
一 明治戌辰宗對馬守旨[戊]を奉して大差使を派し隣誼を脩めん事を告く其書中政權一歸皇室不佞嚮奉勅左近衛少將平朝臣某禮曹參判公等之語あり然るに彼謂右皇室奉勅之字は兩國書契中未た之を用ゆる者あらす左近衛少將平朝臣も先規無之押印約の如ならす禮曹參判公は宜く禮曹參判大人と書すへしとて接受不致候事
一 其後談判度重り庚午二月に至り東萊府使尚又單簡を以て大差使へ遣し皇勅等之字を論難致候事
一 然れ共左近衛少將の稱呼丈けは承知致候事
一 皇勅等の字句を用ひす兩政府不差碍様の法語を用ひ交際を收めは可然哉と訓噵談合の末書信を作り同十月外務官員等渡韓候へ共訓噵一應の面晤さへ許し不申候事
一 辛未六月我漂人數名を和館の前岸に放棄置候事
一 宗對馬藩知事を東萊釜山兩使に送りて外務官員に款接せられん事を請ひ候へ共承知不致旨返簡差越候事
一 同人對馬藩知事を止られ更に外務大丞に任せられ兩國間交際を掌る可き旨の告書幷外務官員等東萊釜山兩使に面晤を請ふの書簡を送れり始め遣せし大差使は四年の時月を費し歸國候事
一 新差使等著韓の日より訓噵に應接を懇求する事殆んと二十回に及ふといへとも其儘上京致候事
一 別差下來候に付兩書契の寫しを寄付し速に回答あらん事を求るに三十餘日猶豫あり度段申出候事
一 右期日を過て廿五六日後に至り訓噵下來申出候には公幹之事は議を國中に收めて後決答すへく其期限の如きは早晩歳月を定むへからすとの儀に有之候事
一 此上は親しく東萊府使に接して使節苦悶の情決答の大限を約し度に付訓噵に同伴開路候様申聞候處承諾に付差使館司等東萊に入り面謁を乞へとも許さす軍官をして答へしめ候には議を國中に收めて後決答すへし惟恭て早晩間の處分を竢へしとの事に有之故に其早晩間の期を問へは十年乃至六七年と言ふ因て其言ふ處を彼に筆記せしめ空しく歸館候事
一 其後論難書を作り投示せし處一人の接受者無之候事
一 右之情状にては假令十年を期す共何等の都合可相成哉此上は大丞の所分を取るの外無之旨を告け差使等引取り相成候事
一 然れ共右和館は嘉吉以來我人民往來居住我國權も行はれ來り候處にて一朝打棄候は好ましからさる儀に付追て使節差立談判相成迄は左件之通り取計候方方今の便宜に可有之事
一 草梁館司幷代官所は打追の通相立置可申候事
一 無用之士官雜人等は悉く引纏め歸國可爲致事
一 商人の去留勝手たるへき事
一 勘合印は舊章通りの事
一 歳遣船は不差渡候事
一 歳遣滯品宗氏負債と相成候分は勘定可拂渡事
一 對州に滯居候漂民共は盡く送り返し候事
一 右の目的を達すへき爲め一時格段なる官員を草梁まて差遣し穩當所分可致候事

明治五年壬申八月十日
外務卿 副島種臣
正院御中